⬜︎真空管とは、
真空管というものは、真空にした容器の中に電極がいくつかある構造体である。
その電極の数によって2極管や3極管などと名前がつく。
基本的な原理を説明する前に真空とはどんな状態かを説明する。
⬜︎真空状態とは
通常の大気よりも低い気体で満たされている空間状態のことを指します。
量子力学的に言うと、
真空状態とは、物質の存在しない虚無の空間になる。
要するに真空管内部で発生した電子は衝突が無いため
妨害される事無く加速することが出来る。
下記の図で示すように原子・分子は温度と比例関係に振動している。
原子は電子の流れを遮るため、原子・分子間を縫って加速するため電子の勢いである電圧や量である電流がある程度必要になってくる。
こえらの原子が真空状態になると存在しなくなるため電子は通り放題なわけである。
なお絶対0度と真空は違うのであまりごっちゃにならないで欲しい。
真空状態というのは磁場が存在するので、ある程度温度は存在する。
絶対温度は磁場の発生すら許さない環境なのでより電気電動の効率は上がることになる。
増幅によく似たものとしてバイポーラ及びユニポーラトランジスタ、OPAMPが存在するが、それとの違いをみていこう。
⬜︎真空管とトランジスタ
トランジスタは固体である半導体中の電子の動きをうまく制御す ることにより、
信号の増幅やスイッチングができる素子である。
応答 速度の早い(周波数特性の良い)トランジスタを作ろうとすれば、 電子が電極間を移動する時間がその応答速度時間より短くないとならない。
技術の進歩は電極間距離をどんどん短くしたトランジスタが作られてきた。
電極間の電子の移動時間を短くする には、電子の移動速度が早くなっても良いので、より電子の移動速度が速い半導体を使う工夫もされている。
しかしながら、半導体中の電子の速度は、格子散乱などの影響で、真空中の電子の速度に比べるととても遅い。
また、極力固形物質の原子の振動を抑え電子を加速させないといけないので、かなり熱にデリケートと言うのもこう見ると理解できる。
電極間に同じ電圧をかけたとき、その間を電子が移動する時間は、真空中の方が半導体中より 10 倍か ら 100 倍早い結果となる。
このことから出てくる発想は、現在のトランジスタと同じ寸法で、 電子が移動する媒体を半導体から真空に替えれば、超高速のトラン ジスタが実現できるかも知れないということ。
一方で、真空中の電子は残留ガスと衝突をしない弾道性をもった状態で利用するので、信号を増幅さ せるメカニズムとしてトランジスタにおけるメカニズムとは全く異なる方法を用いることが出来る。
⬜︎真空管のメカニズム
ここでは2極管を用いて基礎を説明する。
真空にした管の中に電極板が入っている。
向かい合った一組の電極は、
上側の電極をプレート、
下側をカソードと言う。
そして、カソードのすぐ下に、ヒーター(フィラメント)と呼ばれる電熱線が配置されている。
これらすべてがガラス管に封じ込まれていて、中が真空になっている。
従って真空管を用いるときは、主電源とヒーターの電源を用意する必要がある。
この状態でプレートに電池のプラス、カソードに電池のマイナスをつなげると、熱せられたカソードの電子が、プレートに飛び移ろうとします。これは静電気の働きによるものである。
※真空にしていないと、、、
途中に空気の分子(酸素や窒素)があると、これがじゃまして効率よく飛び移れません。
また酸素はヒーターをどんどん酸化させて、燃やしてしまいます。
真空管の特徴は
真空管の特徴とは、カソードは加熱されているのにプレートは加熱されていないという点である。
上記図は2極管の原理になる
カソードの中の電子がプレートのプラス極に引き付けられて、カソード板から空間中へ飛び出し、プレートへ吸い込まれて行く。
こうして、一定量の電子がカソードからプレートに向かって真空中を飛んで行き、電子の流れができ、結局、プレートからカソードに電流が流れたことになる。
電子の流れる方向と電流の方向は逆なので、プレートからカソードに向かって電流が流れる、ということになる。
また、プレートの電圧を上げるほど、たくさんの電子が飛び出し、たくさんの電流が流れる。
電流と電圧についてはこちら
次は、
プレートの電位をカソードに対してマイナスにしてみる。
すると、カソードの電子はプレートのマイナスと反発し合うため空間中へ飛び出すことはななくなる。
すなわち電流は流れない。
こんなわけで、2極管は、プレートからカソードへの一方向にしか電流を流さない素子であることがわかる。
プレートの電圧Epに対する、プレートに流れ込む電流Ipの関係は、
ある電圧までは、IpはEpに比例するようなカーブを描き、その電圧以上になると飛び出す電子の量が飽和するために、電流は一定以上増えなくなる。EpがマイナスのときはIpはゼロである。
こういった、電気を一方向にだけ通すことを整流作用といい、2極管は「整流管」とも呼ばれている。
⬜︎音響機器で使用される3極管とは、
足が一本増えるわけで、できることが増えるとイメージできると良い。
3極管は、図のように2極管のカソードとプレートの間に、網状のグリッドと呼ぶ電極を入れた構造になっている。
なお、グリッドを先に何も付けないアンポップ状態にした上で、
ヒーターに電流を流してカソードを熱し、
プレートにプラスの電圧をかけると、
2極管と同様に、カソードから電子が飛び出し、プレートへ流れ込み、結局、プレートからカソードに向かって電流が流れる。
ここで、3極管なので間にグリッドがいるわけだが、
電子の流れをほとんど邪魔をしない。
同様に電源の極性を逆にすると、
電流は流れないので、整流効果も同様に存在する。
それでは3極管の使い方として、ここからが特徴的なのですが、
グリッドにマイナス電流を加えることが出来る。
グリッドに加えるマイナス電圧で、
プレートに流れる電流をコントロールすることが出来るのである。
そういうことから、このグリッドをコントロールグリッドと言う。
グリッドはカソードに接近した位置にあるので、グリッドのマイナス電圧は小さくても、プレート電流を制御することが出来る。
それから、グリッドはマイナスになっているので、カソードから出た電子はグリッドの方へは流れ込むことは無い。
グリッドには電流がまったく流れないということになる。
その小さな電圧だけで、大きなプレート電流を自在に制御できるので、
これが増幅作用を持つことになる。
それでは、2極管と同じように、プレート電圧Epとプレート電流Ipの関係は、、、
図では比例部分のみの記載になります。
グリッド電圧Egがゼロのときは、2極管と同じような曲線になる。
ここで、たとえばグリッドに-1Vの電圧をかけてEg = -1Vとすると、Epをゼロからちょっと上げてもグリッドではね返され、Ipはしばらくの間流れない。しかし、ある電圧を越すとIpが流れ始め、あとは先ほどと同じような曲線でIpが流れて行く。
さらにEg = -2Vとすると、Egが-1VのときよりもIpが流れ始める電圧Epが高くなり、同様にそこを越えると同じような曲線で上がって行く。
これが有名な3極管のEp-Ip特性になる。
⬜︎真空管回路の設計
真空管を使用した設計には、
・グリッドクリック抵抗
・カソード抵抗
・負荷抵抗
を設計した後、
交流設計にてゲインの調整を行う必要がある。
実際の増幅回路は下記のようになります。
この回路の抵抗とコンデンサの値を決めて行くことになるのだが、
まずは抵抗値から決めていくことにします。
R1:グリッドリーク抵抗
R2:カソード抵抗
R3:負荷抵抗
そしてB+の電源電圧になる
この3つの抵抗値と電圧を決めていく。
なおコンデンサに関してはDCカットのパスコンと安定化用のコンデンサなのである程度設計上決まった値が入ることになることは言うまでも無い。
<グリッドリーク抵抗の決め方>
通常グリッドリーク抵抗には100kΩから1MΩなど大きな抵抗値が使われる。
真空管はグリッドリーク抵抗に電流が流れないので、
入力インピーダンス(グリッドとカソードの間の交流抵抗値)は無限大になる。このため、増幅回路自体の入力インピーダンスはグリッドリーク抵抗の値そのものになる。
ここで、グリッドリーク抵抗を例えば1kΩとか小さくしてしまうと、増幅回路の入力インピーダンスが1kΩになってしまい、この増幅回路の前の段の動作に影響を与えてしまうことになる。
<負荷抵抗の決め方>
図中のR3はいくつか決め方にルールがある。
ルールその1
RC結合のときは次段の入力抵抗(グリッドリーク抵抗)の値が関係する。
交流域では負荷抵抗R3と次段グリッドリーク抵抗R4は並列になる。
ここで、R3がR4より大きいと、交流域で並列になったとき、直流のときのR3よりがっくりと抵抗値が落ちてしまう。
すなわち、直流で設計した動作から、交流での動作がずいぶん離れてしまうことになるのである。これは結果的に歪が増えるなど具合が悪くなることが多いので、R3はR4のふつう半分以下ぐらいに決める。
1MΩなのであれば500kΩなど。
ルールその2
負荷抵抗を小さくするとゲインが落ちて行く。
これは、3極管の場合、真空管の内部抵抗と関係している。
このため、負荷抵抗R3は、内部抵抗の倍以上にするのが通常の設計となる。
ルールその3
バイアスとの関係性に影響する。
負荷抵抗の値はバイアスの取り方にも関係し、このバイアスの違いによって増幅率や歪みも変わってくる。
そして、このバイアスは電源電圧とも関係するので、最終的な微調整なときにこれらを変更する必要が出てくる。
従って設計の前段階ではルールその1を適応し徐々に変更していくことを頭に入れておけば良いと考える。
<カソード抵抗(バイアス)の決め方>
負荷抵抗を決めて、電源電圧を決めればバイアスを決めることができる。
この、負荷抵抗と電源電圧とバイアスは3つどもえのようなところがあるので、あるていど行ったり来たりしながら決めて行くことが多い。
先に電源電圧を決めることがここでは重要となるので、
電源電圧B+を決めてしまいます。ここでは200Vとします。
スペックシートを見ながら必要となる電源を決めること!
そうすると先程の負荷抵抗を500kΩ
電源を200Vととして図示。
そうすると、
Ep-Ip曲線の上に、負荷抵抗の500kΩのロードラインを引くことが出来る。
ロードラインの引き方は、まず180kΩでプレート電圧がゼロになる電流を求める。
I = 200V / 500kΩ = 0.4mA
こいつをもとにEp-Ip特性図の上にロードラインを描く。
(0mA , 200V) と(0.4mA , 0V)の2点を直線で結ぶと、
500kΩのロードラインを描くことが出来る。
バイアスの決定は、
このロードラインと曲線群のどの交点を使うかになる。
おおよそ想定される入力電圧のPPを決めてください。
入力電圧が決まると、
は先程求めたロードラインの後転から垂直に下に線を引き、しっかり波形が振れる部分を探す。
直線性のよい真ん中辺を使うのが普通である。あまりバイアス電圧を小さくすると、信号のピークの部分がグリッド電圧のプラスの領域にかかってしまい、原理編で説明したようにグリッド電流が流れ、歪んでしまう。
それではしっかり波形を振ることのできる座標がもとまれば、
カソード抵抗を求める。
ロードライン上の点Aの座標を求める。
ここでは、バイアス電圧Egを1Vと決める。
Eg = 1 (V)
Ip = 0.18(mA)
とする。
その場合のカソード抵抗R2は、
R2 = 1 / 0.18 = 5.55kΩ
となる。
これで一通り真空管のアンプの設計が一通り終わったことになる。
ゲインはロードラインを上げ下げすることで波形の振幅の幅は大きくなりますので、
そこをみると調整することが出来る。